小湊鉄道の五井駅に隣接する「五井機関区」。車両の点検修理を行う工場や、区内に保存された貴重な蒸気機関車、さらには東北地方からやってきた注目の車両などを見学してきました!
昭和95年⁉︎時代が止まった五井駅
今回参加したのは小湊鉄道の主催ツアー、その名も「気動車ざんまい」。小湊鉄道・いすみ鉄道の鉄道機関区を見学。さらに貴重な鉄道車両を保存する「ポッポの丘」を見学する、まさに気動車ざんまいな日帰りツアーです。
まずは集合場所の「五井駅」へ。SNSで何度もみた光景が目の前に広がっていて、ちょっと感激!ここだけ時代が止まっているみたい。
写真の奥にみえる小湊鉄道の「五井機関区」を見学させて頂きます。
さっき跨線橋からみた機関庫と気動車が目と鼻の先です!
1960~70年代製造のキハと、2000年代製造のE259系。まるで時が歪んだような光景。
高層マンションとキハ。
こちらでは「トロッコ里山里海号」が発車準備のため入換中。先頭は蒸気機関車⁉︎かと思いきや、かつて小湊鉄道を走った蒸気機関車を模したディーゼル機関車なのだそう。
では、いよいよ「五井機関区」の中へ。
車体は大正生まれ、大切に保存されるキハ5800
まずは車庫から顔を出した、いかにも古い気動車。これは「キハ5800」という車両。
製造は昭和35年とありますが、実は車体はなんと大正生まれ。
さらに元々電車であった車両を1960(昭和35)年に小湊鉄道が譲り受けた際に気動車に改造したという、なんともすごい車両。だから製造銘板が昭和35年だったんですね。
1978(昭和53)年に引退後はここ五井機関区で保存。2019年には市原市の指定文化財に指定されました。
時代とともに塗装が剥げてしまいましたが、剥げた向こうに見えてきたマルーン色は、おそらく製造当時の色ではないかと、機関区の方がおっしゃっていました。こんな所にも歴史の重みが感じ取れますね。
なんと「キハ5800」の車内も見学できるということで、特別に車内へお邪魔します。
いやー、すごい。
この空間だけ時代が止まっているかのよう。
運転席。「キハ5800」と大きく書かれてあります。
開始早々、大変貴重な車両を見学させて頂きました。
貴重な国鉄型ディーゼルエンジン「DMH17」
一旦車庫の外へ。奥に見える自動洗車機。残念ながら壊れているそうで、車両はすべて手洗い。
給油ホース。ここで気動車に軽油を補給します。
外に無造作に置かれた貨車。こちらも実は大変貴重なもの。旧日本陸軍が製造したこの貨車、線路の幅に合わせて車輪の位置を変えることができる、今で言う「フリーゲージトレイン」の元祖。現存するのはおそらく1、2両ぐらいなんだって。
先ほどの機関庫の隣にある、車両の修理点検を行う車庫。
かなり古いですが、台風や地震にも耐えてきた頑丈な建物。ただし、明かり取りのトタン屋根はよく飛んでいくそうで。
古さを感じさせる中でも、部品や器具はとてもきれいに磨かれていました。
クラッチ要注意。
なぜかマスコン。
なぜかライト。
座面の裏側。運転席かな?
機関庫の中に置かれていた巨大な物体。これぞ大変貴重なエンジン「DMH17C」。
1951年(昭和26年)から1960年代末まで大量に製造された、国鉄の気動車用標準ディーゼルエンジン。ほとんど現存しないこのエンジンですが、小湊鉄道の「キハ200」は全車に搭載されていて大変貴重!
今でも「DMH17C」搭載車があるのは、ここ小湊鉄道とお隣「いすみ鉄道」、「ひたちなか海浜鉄道」「水島臨海鉄道」のみ。部品がほとんどなく、整備には大変苦労されているのだそう。
それでも、ない部品は自分達で作るなど高い技術力でエンジンを守っていらっしゃるのです。
小湊鉄道の車両撮影会
車庫の外に並ぶ車両達。
こちらでは「キハ200」「キハ40」を並べての撮影会!
今回は特別にヘッドマークも付けて頂きました!
朱色とクリームのツートンカラーは、国鉄時代の気動車そっくり。行先表示も何もない顔がまた、レトロさを醸し出します。
「キハ40」に掲げられたヘッドマークは、沿線にある「髙滝神社」から。実は、かつて掲出されていた京王電鉄のヘッドマークをオマージュしたデザインなのだそう。
たしかにそっくり!もちろん本家のお墨付きです。
こちらは先日引退したばかりの「キハ202」。
途中でヘッドマークをチェンジ!
「鶴峰」は、同じく沿線にある「鶴峰八幡宮」から。
こちらも同じく京王電鉄のヘッドマークをオマージュ。「髙滝」よりもっとそっくり!
明治大正生まれの貴重な蒸気機関車
撮影会もひと段落し、車庫の外へ移動します。
屋外に保存されていたのは、かつて小湊鉄道で活躍した3機の蒸気機関車。「房総里山トロッコ」を牽引する機関車のモチーフにもなっています。
こちらは大正時代にアメリカから輸入した機関車。
B104は明治時代にイギリスで製造されたものを当時の日本鉄道が輸入。
『本県(千葉県)における鉄道交通史上重要な資料』として、3機とも県の有形文化財に指定されています。大変貴重な機関車を大切に保存されている、素晴らしいことですね。
東北からやってきたキハ40
今回の五井機関区見学の最後。参加した皆さんから熱い注目を集めていたのが「キハ40」。
東北地方のJR線を走っていた2両(キハ40 2021・2026)が小湊鉄道にやってきたのは2020年5月。
輸送の際に車両に貼られたこの票。実はとってもめずらしいそうで(今はデジタル管理だから?)写真に収める鉄道ファンが多かったんだって!
奥に見えるのは「カミンズ製」のエンジン。なんでもキハ85(ワイドビューひだ)と同じ(?)エンジンなのだそう。
台車はコイルバネ。
日本で広く使用され部品が豊富な「カミンズ製エンジン」と、キハ200と同なので保守や部品管理がしやすい「コイルバネ台車」の2つのポイントが、譲渡にあたってとても重要だったと、担当の方はおっしゃっていました。
さらに先日、機関区内で「キハ200」と併結して運転してみたら、低速ですが問題なく動いたのだそう。国鉄時代の車両はとにかく汎用性を重視して作られており、国鉄の「キハ20」を基本とした「キハ200」と「キハ40」との併設運転も夢ではないかも!
特別に車内も見学させて頂きました。
トロッコを除いて、小湊鉄道では初のクロスシート。
観光列車やイベントにも活用できそうですね!
運転席。ブレーキハンドルがはまっているのを見ると、ちゃんと現役で走れるのだなと実感できます。
車内にはまだ、JR時代の面影が。
小湊鉄道には汲み取り装置がないので、トイレは使えないそうです。
現在は、国土交通省による確認の申請に向けて準備を進めているところで、今後のスケジュールはまだ未定とのこと。
しかし、キハ40の車内が多くの乗客で賑わう日が来るのはそう遠くないはず。小湊鉄道ではどんな活躍が見られるのか、楽しみですね!!
行楽客で賑わう列車で上総中野へ
という事で「五井機関区」の見学は終了。あまりに充実していてすでにお腹いっぱい(笑)ですが、「気動車ざんまい」はまだまだこれから。
今度は「小湊鉄道」に乗車して、いすみ鉄道と接続する「上総中野駅」を目指します。
小湊鉄道線のホームへ。
さっきまで見学していた「キハ200」。
「カランカラン」とDMH17の独特なサウンドが響き渡っています。このサウンドだけでも非常に貴重。いやー感激。
この日は紅葉シーズンでもあり、多くの乗客で賑わっていました。見慣れないレトロな車両は、恰好の記念撮影ポイント。
では、車内へ。
座席はロングシート。ちょっと薄暗い照明が、またレトロ。
ドアの調子が悪いのかな?古い車両なので整備も大変そう。
発車する頃には、2両の座席はすべて埋まり立ち客もいるほど。
車掌さんの前を陣取り。
列車はゆっくりと五井駅を離れていきます。
キハ200の全てが詰まった動画。
— マサテツ (@masatetsudo) 2020年11月15日
手笛、戸締め、ブザー、DMH17C、コイルバネ台車、落ちる。#小湊鉄道 pic.twitter.com/uesX3pkFVh
車掌さんは車内改札で大忙し。
昔からほぼそのままのレトロな駅舎が、数多く見られました。一駅ずつ駅を巡ってみても楽しそう。
のどかな駅前。
反対列車と行き違い。
列車は「上総牛久駅」に到着。
観光シーズンだからか、ホームではフードやおみやげなどを発売。多くの人で賑わっていました。
歴史的大発見だった「チバニアン」の地層が発見されたのは小湊鉄道の沿線。車窓からも地層が見られる箇所がいくつかありました。
「これはチバニアンかな?」なんて考えてたら、いつの間にか終点の「養老渓谷駅」。
ほとんどの乗客が「養老渓谷駅」まで乗車していました。皆さん紅葉が目的のようです。
本来なら「上総中野駅」まで列車で移動したい所ですが、残念ながら豪雨災害のため養老渓谷〜上総中野間は運休中。ここからは貸切バスに乗車し移動します。
バスの車内でランチタイム!
さぁ、いよいよ「上総中野駅」から『気動車ざんまい・いすみ鉄道編』がスタートします!