島根県から広島県へ山あいを走る「木次線」。三段式スイッチバックなど見どころ満載な木次線をトロッコ列車が行く!その名も「奥出雲おろち号」。
- 除雪列車で活躍した機関車が引くトロッコ列車
- スピードを出す山陰本線区間
- いよいよ木次線へ
- 駆けめぐる車内販売天国
- 木次線のハイライト「三段式スイッチバック」
- 3方向から線路が集まるターミナル、備後落合
- 帰りはのんびりと木次線を満喫
- 関連リンク
除雪列車で活躍した機関車が引くトロッコ列車
「奥出雲おろち号」の運転区間は木次線の木次〜備後落合間ですが、日曜や祝日などの特定日に限り「出雲市駅」から発車します。木次駅発より約1時間20分長く走るので乗り得!
出雲市駅から発車する観光列車は他に、鳥取まで山陰本線を走る「あめつち」、そして先日デビューした「WEST EXPRESS 銀河」。結構多いですよね!
今回乗車する「奥出雲おろち号」は4番線からの発車。
発車30分前でしたが、すでに入線していました!
小さなヘッドマークと…
行先表示はシンプル。
1号車はトロッコ車両。
2号車は客車ですが、こちらはトロッコ車両の控え室になっていて、1号車と同じ席番の座席が利用できます。
"折り戸"ってのが客車らしくていいですね!
先頭「奥出雲おろち号」を牽引するDLは「DE15 2558」。
DE15は除雪用機関車として、1967年~1981年にかけて製造されました。
除雪の時は、前に「ラッセルヘッド」と呼ばれる機械を連結するために、おでこに黒い出っ張りがあるのです。
ラッセルヘッドを連結して除雪するDE15。Wikipediaより
では、車内へお邪魔します。
トロッコ車両はこんな感じ。
木製座席のボックス席、真ん中にはテーブルも。
車両の前と後ろは、窓向きのカウンター席。
窓は無く、あるのは2本の手すりのみ。雨の時は控え車両もあるので、まさに正真正銘のトロッコ!
窓から顔や手は出さないようにしましょうね。
こちらが、その控え車両となる2号車。1号車と同じ席番の座席に座ることができます。
座席は「簡易リクライニングシート」と呼ばれる、ストッパー機能がないやつ。先日の「DL大樹」の時も同じタイプでした。
背面テーブルはありませんが、窓際に小さなテーブルがあります。
トロッコはもちろん、客車列車の旅情を楽しむことができるのも「奥出雲おろち号」の魅力!
車内にあったパンフレットを見ながら、発車の時を待ちます。
スピードを出す山陰本線区間
8時45分。奥出雲おろち号は「出雲市駅」を発車。
あいにくの曇り空。晴れてくれないかなー。
出雲市の次の駅「直江駅」に到着。
早速ここでしばらく停車。上下の「スーパーまつかぜ」と離合します。
一旦止まったのち、エンジン音を響かせながら猛スピードで走り去って行きました。
スーパーまつかぜの後を追うように、奥出雲おろち号も発車します。
宍道駅までは山陰本線を走ります。「やくも」や「まつかぜ」など特急列車も多数走る幹線だからか、結構なスピードで走る奥出雲おろち号。風が強く寒いので、宍道までは控え車両にいても良いかも。
という事で、私はしばらく控え車両へ。
寒気のために窓を開けると、風が気持ちいい!
控え車両から見るトロッコ車両。
9時17分「宍道駅」に到着。ここまで先頭を走ってきた「DE15 2558」ですが、ここから進行方向が変わるので最後尾になります。
トロッコ車両にも運転台があるので、機関車を付け替えることなく走る事ができるのです。
いよいよ木次線へ
『木次線出発進行!』
9時28分「宍道駅」を発車。いよいよ木次線へと入っていきます。
ここからは、運転台横が人気のスペースに。
右へ左へ、山を分け入っていく様子を先頭から"かぶりつき"。
小さな駅の側線には除雪車が止まっていました。「DE15 2558」が牽引する除雪列車は、新しい除雪車へと役目が移りました。
のどかな風景の中を走る列車。
眼下に川が見えた!
木次線内に入ると速度が落ちるので、トロッコ車両は風が気持ちいい!
ただし、この日の外気温は20度。1枚余分に上着があるといいかもしれません。
小雨が降ってきました。「奥出雲おろち号」には控え車両があるので、急な雨でも安心です。
列車は「木次駅」に到着。特定日以外の奥出雲おろち号は、ここ木次駅が始発です。
駆けめぐる車内販売天国
さぁ!ここからはお待ちかね「車内販売天国」がスタート。この先各駅で車内に乗り込んだりホームから発売したりと、何種類もの車内販売がやってきます!
まずは「木次駅」。「フック雲南店」というスーパーマーケットが作る、焼肉弁当。こちらは事前に予約が必要ですが、この日も何組かが購入されていました。
トロッコ車両から手を伸ばして購入したのは「奥出雲和牛焼肉弁当」。
程よく脂がのった柔らかい和牛。タレがしっかり染み込んでいます。添え物の玉子焼きと頓原漬(山の幸を使った福神漬)も美味!
次は「出雲八代駅」。販売員のおばさんが乗り込んできました。
発売していたのは「田村屋」という和菓子店の「クリーム大福」。まだ半解凍状態だったので少し経ってから頂きましたが、柔らかくてふわふわのお餅の中にカスタードがたっぷり入っていました。食後のおやつに喜んで頂きました!
クリーム大福のおばさんは「出雲三成駅」で下車。代わりに今度は、おじさんとおばさんの2人の販売員が乗車。はぁー忙しい!!
おじさんから購入した「仁多牛べんとう」。
ご飯も牛肉も地元産。イメージは牛丼風ですが味付けが濃くないので、仁多牛の美味しさがちゃんと引き立っています。そして何より、弁当箱の隅から隅までお肉がたっぷり。ボリュームもあって大満足!
同じく「出雲三成駅」から乗り込んだおばさんから購入したのは「笹ずし」。
出雲横田駅近くにある「飯田旅館」で先代から伝わってきたという笹ずし。笹に包まれた押し寿司ですが、えび、さば、うなぎ、かに、たこと、一つ一つ中身が違っていてびっくり!笹の香りがいい感じに味を引き立てていました。
次は「亀嵩駅」。亀嵩駅といえば駅舎に「扇屋」という蕎麦屋さんが入っている事で有名。お客さんのほとんどが、そば弁当を求めて一斉に席から立ち上がります。
私は事前に予約をしていたので、確実にゲット。
出雲の蕎麦は、ねぎとかつお節がかかった蕎麦につゆをぶっかけて頂きます。さらに扇屋のそば弁当は、温泉卵と山芋が添えられてます。黒っぽい色合いの蕎麦は太くてコシもあり、香りもよくて美味!温卵・山芋とともにズルズルと、あっという間に完食。
さあさあ、これでは終わらない!今度は「八川駅」で、これまた事前に予約したそば弁当を購入。
駅近くにある「八川そば」のそば弁当。こちらはもみじおろしが添えられていて、さらに山菜の漬物や舞茸も入っています。
同じそば弁当でも添え物や味も違うので、ぜひ食べ比べするのがおすすめ!
「もうお腹いっぱい」とは言わせません!「出雲坂根駅」で降りると、焼き鳥のいい香りが!
ホームの目の前でおじさんが焼いてる焼き鳥は、鶏肉がぷりぷりで、濃いめのタレも絶品!これはビールが進む!
ただし、おじさんがマイペースなのか、焼きたてにこだわるのか、網いっぱいに焼いてる割にストックが無いのですぐに売り切れ。停車時間も5分ほどと短いので、焼き鳥が食べたいなら一目散に行くべし!
車内販売は数に限りがあり、特に「そば弁当」は予約でほとんどが売り切れていました。
ホームページを見ると予約先が記載されているので、どうしても食べたい商品は事前に予約する事をおすすめします。
木次線のハイライト「三段式スイッチバック」
「出雲坂根駅」からは、木次線のハイライト『三段式スイッチバック』へ入っていきます。
次の「三井野原駅」までは直線距離で1km程度ですが、この間の高低差はなんと160m。そこで、木次線は"Z型"の三段式スイッチバックとΩカーブで勾配を緩和しながら、6.4kmかけて走るのです。
列車は右側の線路へ。ここから先は平均25‰の勾配。
雪除けのシェルターを超えて停車。
線路はここでスイッチバック。運転台を変わるため、運転士さんが車内を通ります。
右側が先ほど走ってきた線路。列車は左側へ、さらに勾配を登ります。
先ほど走っていた線路は遥か下へ。
赤い橋は、国道314号線の「三井野大橋」。上に見上げていた橋でしたが…
橋を見下ろす高さまで登ってきました。どれだけすごい高さを登ってきたのかが、よくわかります!
同じ場所から見えるのは、国道314号線のループ橋、通称「奥出雲おろちループ」です。国道も、高低差105mをこのループ橋で一気に登るのです。
やがて列車は「三井野原駅」に到着。標高は726m、JR西日本全駅の最高駅です。
いいー汽笛だわぁー#奥出雲おろち号 pic.twitter.com/a1y3HZRoYB
— マサテツ (@masatetsudo) 2020年9月13日
ここからは下り坂。右へ左へカーブが続く線路を、列車はゆっくりと下っていきます。
長い下り坂、ブレーキハンドルを握る手にも力が入ります。
終点の「備後落合駅」はもうすぐ。
3方向から線路が集まるターミナル、備後落合
列車は定刻よりやや遅れて、終点の「備後落合駅」に到着。
駅名の由来は、芸備線・木次線が3方向から"落ち合う"から。実際に、駅がある地名は「庄原市西条町」で、落合ではありません。
駅前には「落ち合う駅の鐘」。手作り感満載。
かつては陰陽連絡(山陰と山陽の連絡)の拠点として、乗り換え客や貨物の取り扱いで賑わったそうですが、今では3方向から来る列車はわずか11本。
そんな備後落合駅ですが、奥出雲おろち号が折り返すまでの約20分間を使って、地元のガイドさんが駅の案内をしてくれます。
備後落合駅にやって来ていた機関車やディーゼルカー。
先ほど走ってきた三段式スイッチバックの説明も。
このガイドの方は、国鉄時代に機関士をされていたそうで、廃線の危機に晒されている木次線・芸備線をなんとか維持したい思いから、こうしてボランティアでガイドをされているのだそう。
帰りはのんびりと木次線を満喫
あっという間に復路の発車時間、折り返しの20分が少なく感じてしまいました。ガイドさんのお見送りを受けながら、奥出雲おろち号は再び木次駅を目指して走ります。
青空が見えてきました。やっぱりトロッコ列車の旅は青空の下がいいですね!
軽快に坂を下る奥出雲おろち号。 pic.twitter.com/5T9q3jwZjl
— マサテツ (@masatetsudo) 2020年9月13日
復路では車内販売がないので、今度はゆっくりのんびりと景色を楽しみましょう。
再び三段式スイッチバックへ。
出雲坂根駅に進入。
出雲坂根駅に停車する「備後落合行き」。木次線に入って反対列車と行き違うのは、おそらく初めて。
備後落合行きは、三段式スイッチバックの登り勾配へと挑んで行きました。
木次行きは先頭となる「DE15 2558」。
奥出雲おろち号のヘッドマーク。とてもカッコよくて、個人的に大好きです。
復路は皆さんお疲れなのか、乗客の大半は控えの客車でお休みのよう。私は、空いたトロッコ車両でのびのび。
列車は「出雲三成駅」に到着。往路はすぐの発車でしたが、復路では約18分の停車時間があります。
駅には産直市場が併設されているので、しばしお買い物。
反対ホームに周れば、奥出雲おろち号の全景が撮影できます。機関車から客車へと一体感のある塗装が、とっても素敵じゃないですか!
列車は出雲三成駅を発車。またまた雨が降ってきたので、控えの客車へ避難。「山の天気は変わりやすい」って言いますし。
「雨が上がったなー」と思ってたら、なんときれいな虹が出ていました!「奥出雲おろち号」最高のフィナーレ!
15時57分。奥出雲おろち号は終点の「木次駅」に到着。
ハートマークだから「すき」って事で「木次」「きすき」「き♡」って事ですね!
木次駅でゆっくりしている暇はなく、わずか3分の接続で宍道行きに乗り換え。これを逃すと、次の列車は1時間後。
「奥出雲おろち号」に乗ろうと思うと、岡山から初電の「やくも」や「サンライズ出雲」に乗っても間に合いません。必然的に、島根県内で宿泊するか夜行バスを利用する事になります。
他の観光列車と比べて乗車するハードルは高いですが、それでも"頑張って"乗る価値があるぐらい楽しい列車でした。
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