国鉄形気動車「キハ28」「キハ52」に乗って昭和にタイムスリップ。いすみ鉄道の「観光急行」に乗ってきました!
*2022年2月の情報を基に作成しています
国鉄形気動車を再現した新型車両
旅のスタートは、JR外房線と接続するいすみ鉄道の始発駅「大原駅」から。「観光急行」が発車する「大多喜駅」まで普通列車で移動します。
ホームに待っていたのは、鮮やかなイエローで身を包んだレトロな見た目の車両!もしや今回乗車する「キハ52」では!?
実はこの気動車、中身は新型だけど見た目は「キハ52」を模した、いすみ鉄道のオリジナル車両なのです!本当にそっくり!
もちろん新型なので、車内はきれいでピカピカ。座席もボックスシートではなく、ロングシートがずらりと並びます。
「大原駅」にある売店で駅弁を購入。旅の準備は万端です。
普通列車は「大多喜駅」に到着。
反対列車と行き違い、普通列車は上総中野へと発車して行きました。
昭和の国鉄が甦る!キハ28・キハ52
「大多喜駅」は車庫や本社がある、いすみ鉄道の中枢駅。
ホームにはレトロな木造上屋。開業当時からそのままなのでしょうか。いすみ鉄道の前身、国鉄木原線は1930(昭和5)年に開業。1988(昭和63)年に第三セクターのいすみ鉄道に転換されました。
線路の向こうにある車庫では、今日の主役「キハ28」「キハ52」がアイドリング状態。出発を今か今かと待つ状態。
やがて「キハ28」「キハ52」はゆっくりと上総中野方へ引き上げ。いよいよ入線です!
ブォッと煙を吹き出してゆっくり動き出すキハ28。大多喜駅入線。 pic.twitter.com/6ZfJOCSgFO
— マサテツ (@masatetsudo) 2022年2月11日
おぉー!なんてカッコいいのでしょう!無骨で凛々しい姿が最高です!
「観光急行」は土日祝日に運行。曜日や天気によって異なるヘッドマークが装着されます。祝日の今日はなんと"無し"。祝日にしか見られない、貴重な姿です!
ところで「キハ28」に装飾された、赤いひげのようなマーク。これは、国鉄時代に四国の予讃線・予土線などを走っていたミュージックホーン装着車に施されていた"赤ひげ塗装"を再現したもの。
さらにJR四国から貸与されたヘッドマークを装着し、国鉄時代の四国を再現しているのです。まさに現代甦った四国急行!この姿が見られるのは2022年3月末まで。貴重な姿です。
側面のサボには「急行そと房」の文字が。サボも現代では殆ど見られない、貴重なものです。
後ろに連結されているのは「キハ52」。オレンジ色と肌色のツートンカラーは"国鉄一般色"と呼ばれる塗装。主に普通列車などで活躍した「キハ52」の本来の姿です。
当時は急行車両と一般形の混成で普通列車に運用される事もあったそうで、国鉄時代の走行シーンが再現されています。せっかくなら両方の車両に乗車したいので、まずは「キハ28」に乗車したいと思います。
車内に入りデッキを抜けると、ずらりと並ぶボックスシート。
これぞまさに、国鉄時代の急行列車の姿。
その名の通り、網棚。
ボックス席の小さなテーブルには、せんぬきが。
車内の片側にはキッチン設備が設けられています。これは、主に日曜日に運行される「レストランキハ」のためのキッチン。国鉄時代のキハの車内で本格的なイタリアンが楽しめるのです。
本来であれば、ボックスシートにテーブルが装着された状態ですが、現在レストランキハは休止中なのでテーブルを外した状態でした。これも今しか見られない貴重な姿です。
この「キハ28」はJR西日本の高山線で活躍し、ここいすみ鉄道にやってきました。車内には高山線時代の運賃表がそのまま残されています。
製造は昭和39年。東京オリンピックが開催され、東海道新幹線が開業した年。なんと御年58歳です!
剥き出しになった機器やメーター。
和式トイレも当時のまま。
運転台をチラリ。
車内広告に目をやると、なんと国鉄時代の広告でした!東京と吾妻線を結んだ「特急白根号」。女性グループ限定のフリーきっぷ「ナイスミディパス」。
きっぷを忘れていませんか。不正乗車防止の広告。
昭和を思い起こさせる鉄道旅
いよいよ発車の時。「キハ28」「キハ52」の旅のスタートです!
急行列車、大多喜駅を発車。唸りをあげるDMH17H。最高すぎる。 pic.twitter.com/3t27fWPXrs
— マサテツ (@masatetsudo) 2022年2月11日
のどかな風景の中を走る列車。このあたりは、千葉県の中でも有数の米産地だそう。秋には黄金色に染まるのでしょうね。
まっすぐに伸びる線路。
種別は"急行"ですが"急がず行く"列車。遅すぎず、速すぎず、そこそこの速度で走ります。
列車は「国吉駅」に到着。行き違いのためしばらく停車します。
時間があったので、駅舎を見学。
中には、昔懐かしの薪ストーブが。上で焼き芋が焼かれていました。なんだかほっこりしますね。
線路の傍には、かつていすみ鉄道を走ったレールバスと、国鉄形気動車の「キハ30」が保存されています。「キハ30」は今でも動き、運転体験ができるそう。
反対列車がやってきました。
ホームにいたいすみ鉄道応援団の皆さんや観光急行のアテンダントさんが、列車に向かって手を振る姿。この地では鉄道がとても愛されているのだなと、感激。
再び走り出した列車。昭和の急行を感じながら見る景色が、またいいですね。
「上総東駅」に到着。駅名標も国鉄時代のもが再現されています。本当に昭和にタイムスリップしたみたい。
「観光急行」は終点「大原駅」に到着。ここで一旦降車。折返しは上総中野行きとなります。
「キハ52」の方はホームからはみ出して停車。
再び「キハ28」に乗車し、今度は上総中野を目指します。
彩り鮮やかな駅弁!いすみの宝石箱
そろそろお腹も空いたので、ここでランチタイム。普段はレストランキハになる「キハ28」で駅弁をいただきます。
頂いたのは「大原駅」で購入した「いすみの宝石箱」。まず箱がユニーク!先ほど「国吉駅」で見たレールバスがデザインされています。鉄道ファンの心を揺すぶる!
お品書きを見ながら一品一品味わいたいと思います。では、オープン!
おぉー!おかずがいっぱい!宝石箱のように華やかです!
おかずは全部で11種類。赤魚の西京みそ焼き、野菜の煮物、ひじき入りの玉子焼きといった定番のおかず。サーモンで巻いたじゃがいも餅、ホタテ貝柱のトマトソース煮、季節豆と海老の炒めなど、和洋折衷の料理たちが詰め込まれています。
ご飯は、なんと天丼!海老やカニの天ぷらが、天つゆと共にご飯の上に盛り付けられています。天丼の駅弁はかなりめずらしいのでは!
やっぱり駅弁は、列車の旅には欠かせませんね!昭和の雰囲気漂うボックスシートで、当時を想いながら駅弁を存分に味わいました。
列車は再び「国吉駅」に到着。しばらく停車します。
ホームでは、いすみ鉄道応援団の皆さんの姿。キハの被り物がかわいい!駅弁やポップコーンを販売。「べんとぉ〜。べんとぉ〜」のかけ声がまた、昭和の駅を思い起こさせます。
普通列車に運用されたキハ52
「大多喜駅」に到着。急行列車はここまで。この先は乗車券のみで乗車できる普通列車として運行されます。
ホームでは、横断幕を掲げたいすみ鉄道のスタッフさんの姿。こういうの、嬉しいですよね!
大多喜から先は「キハ52」に移動。「キハ28」と違い、デッキがなくて開放的。車両の端にはロングシートもあり、普通列車に運用された「キハ52」ならではの車内。
整理券発行機。
この「キハ52」はJR西日本の大糸線で活躍していました。今も大糸線時代の運賃表が残されています。
扇風機に残るJR西日本の面影。「キハ52」といえば、新潟県の「糸魚川駅」でも同じく大糸線で活躍した「キハ52」が保存されています。
1965(昭和40)年の製造。「キハ28」と1歳違い。
「キハ52」は心なしか「キハ28」よりエンジン音が大きく聞こえます。これも急行形と一般形の違いでしょうか。「キハ28」「キハ52」ともに「DMH17」と呼ばれる国鉄気動車の標準ディーゼルエンジンが搭載されています。現在でも使用されているのは小湊鉄道や水島臨海鉄道などごく僅か。とても貴重なエンジンなのです。
「大多喜駅」を発車してすぐ、右手の山の上に大多喜城の姿。
ここから先は上総中野に向かって登り勾配。「DMH17」の唸るようなエンジン音が車内に響きます。
運転台をチラリ。
運転席の窓には電熱線が。雪国の大糸線で活躍した名残りです。
「キハ52」の車内には、記念撮影用のパネルが置かれていました。
終点「上総中野駅」が見えてきました。
いすみ鉄道の終点「上総中野駅」に到着。
いすみ鉄道の前身である国鉄木原線は、本来は久留里線と結んで大原〜木更津間の鉄道として計画されました。木原線の名も木更津の木と大原の原から取られたもの。しかし残念ながら上総中野〜上総亀山間が建設されることはありませんでした。
代わりに接続したのが小湊鉄道。内房の五井から外房の大原を結ぶ房総横断鉄道として、共通切符も発売されています。
本来ならここで小湊鉄道の車両と並ぶはずでしたが、この日は残念ながら小湊鉄道が運転見合わせ中で、並ぶ姿は実現せず。
サボはいつの間にか普通列車仕様に変わっていました。
まもなく車歴60年
列車は10分停車し折返し大多喜行きに。
「キハ28」「キハ52」の旅も残りわずか。
14時23分。列車は終点「大多喜駅」に到着。「キハ28」「キハ52」の旅はここまでです。
ゆっくりと引き上げてゆく車両。昨年は「キハ28」の故障があり一時は運行が心配されました。幸い修理し復帰できましたが、車歴はまもなく60年。いつ動けなくなってもおかしくないのだそう。できれば末長く走り続けてもらいたいものです。貴重な「キハ28」「キハ52」の旅を楽しみに、皆さんもいすみ鉄道を訪れてみては!
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