明治時代の鉄道の偉人にちなんで名付けられた「いさぶろう・しんぺい」。熊本駅と鹿児島県の吉松駅間を走ります。途中ループ線やスイッチバック、さらに日本三大車窓を望むなど、見どころが満載です。
明治時代の鉄道の偉人にちなんだ「いさぶろう・しんぺい」

熊本県の八代駅から鹿児島県の隼人駅に至る肥薩線。「いさぶろう・しんぺい」は、明治42(1909)年の肥薩線開通に尽力した当時の通産省大臣「山縣伊三郎」氏と、鉄道院総裁「後藤新平」氏の名前を冠しています。

吉松行きの下り列車は「いさぶろう」号。人吉行きの上り列車は「しんぺい」号。普通列車として人吉~吉松間を1日2往復運行(1往復は熊本〜吉松間を特急列車として運転)。「いさぶろう・しんぺい」は、観光客だけでなく地域の人の足でもあるのです。

前回の記事では「はやとの風」に乗って吉松駅までやってきました。人吉行き「しんぺい」は同じホームで連絡。

国鉄時代に製造されたキハ40形を改造した車両(正確には、エンジンが改装されたキハ140形とキハ47形)。隣に止まっていた原型を保つキハ40形と比べると、テールの隣に補助ランプが追加されているのがわかります。

風格のあるボディーカラーは「古代漆色」という名の深赤色。九州新幹線800系の帯と同じ色なのだそう。

普通列車なので、整理券発行機も稼働。


座席は木製のボックスシート。格子状の背もたれが高いので、意外にもプライベート感があります。

車内の中央には、フリースペースのカウンター。

濃い色合いの木材なので、とてもレトロな雰囲気です。
人吉駅の名物駅弁「栗めし」を頂く

吉松駅の発車前にアテンダントさんから購入したのは、人吉駅の駅弁「栗めし」。数量限定ですが「しんぺい」の車内でも発売されています。

栗のカタチをした弁当箱を開けると、大きな栗がゴロゴロ!煮物中心のおかずもいろいろ入っています。人吉の山の幸がギュッと詰まった駅弁。美味しい!
スイッチバック・ループそして日本三大車窓の絶景

吉松駅を発車した「しんぺい」は、次の「真幸駅」で1つ目のスイッチバック。

長い歴史を感じさせる木造駅舎。

ホームには、駅名にちなんで幸せに感謝する「幸福の鐘」が。これは国鉄時代に実際に使われていたのだそう。

列車は一旦バックし再び前進、勾配を登って行きます。

眼下には先ほど降り立った真幸駅が。


次は「矢岳駅」に停車。

駅前には人吉市のSL展示館。

デゴイチの相性で親しまれたD51形蒸気機関車。
ところで、かつてはデゴイチの隣にもう1両が保存されていました。

それが、現在「SL人吉」で活躍する8620形蒸気機関車「58654号機」なのです。

列車は「ループ線」区間へ。山の周りを旋回しながら登って行きます。目の前には雄大な霧島連山。ここが日本三大車窓の1つ「矢岳越え」。


「大畑駅」は、日本で唯一ループ線上に存在するスイッチバックの駅。急勾配を越えるため如何に苦労して線路を引いてきたのか、昔の人の並々ならぬ苦労がわかります。


大畑駅では「ここに名刺を張ると出世する」という噂があるそう。駅舎の壁には名刺がびっしり!

出世を願う方はぜひ名刺を持参して!

大畑駅を通過する列車は1日6本のみ。そのうち4本が「いさぶろう・しんぺい」。

吉松〜人吉間の3駅ともに停車時間があり、駅舎の姿や線路、そして地元の人とのふれあいが楽しめる「いさぶろう・しんぺい」。特急で味わえない「普通列車」だからこその魅力です。

くま川鉄道の「田園シンフォニー」の車両が見えたら、まもなく終点の「人吉駅」。

人吉駅で隣り合ったのは、人吉〜熊本間を走る特急「かわせみやませみ」。観光列車同士の2ショット。

「かわせみやませみ」だけでなく、期間によっては「SL人吉」に乗り継ぐことも可能です。