マサテツ〜食べ鉄旅日記〜

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JR東海・飯田線と中央本線旧線|秘境区間から伊那谷へ[旅行記]

鉄道コム

乗り鉄の最終目標「日本の鉄道全線完乗」を目指す旅。今回は、天竜川の渓谷から伊那谷の田園風景そして南アルプスの山々が楽しめる、JR東海の「飯田線」を中心に旅します。

元々は私鉄路線として開業した飯田線

旅は飯田線の南の起点「豊橋駅」からスタート。

Wikipediaより

飯田線は豊橋〜辰野間のおよそ195kmの路線。元々は私鉄路線として開業したため駅間が短くて駅数が多いのが特徴。全線通して走る普通列車の所要時間はなんと6〜7時間。
また、豊川間は本数が多いものの、北へ進むにつれて徐々に本数が減り、特に山岳区間となる本長篠〜天竜峡間は日中2〜3時間間隔が開く事もあります。

飯田線唯一の特急伊那路

今回は、1日2往復だけ走る飯田線唯一の特急「伊那路」に乗車。本数が少ない区間は特急で一気に抜ける計画です。

飯田まで普通列車だと約4時間かかるところ、特急伊那路は約2時間30分で走ります。

JR東海の特急には「ワイドビュー」の冠が付けられていますが、その名に相応しい大きな窓。

もちろん座席はリクライニングできてゆったり。

豊橋を発車した伊那路。左へ別れるのは「名古屋鉄道線(名鉄)」。飯田線と名鉄は、豊橋から途中の平井信号所まで線路を共有して走ります。これも飯田線が元々は私鉄で開業した名残りなのだそう。

左に名鉄豊川線が見えてくると、日本三代稲荷のひとつ「豊川稲荷」の最寄り駅「豊川駅」。

本長篠までは東三河エリアの市街区間。

家々やゆったりとした田園風景が広がります。

沿線人口が最も少ない秘境区間へ

本長篠を出ると、車窓の緑が近くなり、だんだんと人家が減り山岳区間へ。

湯谷温泉辺りは「鳳来峡」と呼ばれる宇蓮川沿いの渓谷。中でも湯谷温泉駅を出てすぐ左側は、川底に板を敷き詰めたように見えることから「板敷川」と呼ばれています。

ここでお手洗いに行きがてら、先頭車へ。

運転席の後ろはデッキになっていますが、窓が大きく広いのでちょっとした展望席気分が楽しめます。

トンネル。

急カーブ。

鉄橋、そしてまたトンネル。これの繰り返し。特急らしからぬ速度でゆっくりと走ります。

列車は「中部天竜駅」に到着。かつて駅前にあった鉄道博物館「佐久間レールパーク」。展示されていた車両は一部を除き「リニア鉄道館」へ移転。移転から10年以上経ちますが、今も駅事務所の看板に当時の面影がひっそりと残っていました。

眼下に市街地を望みながら、飯田線は再び山奥へ。

中部天竜の次「佐久間駅」と「大嵐駅」の間は、佐久間ダムの建設に伴い線路が水没する事になったため、1955(昭和30)年に新しいルートに変更されました。新ルート区間にある第6水窪川橋梁は「渡らずの橋」や「S字橋」と称され、今や飯田線の名物の一つです。

小和田・田本・金野と言った「秘境駅」と呼ばれる駅を通過。周りに集落はおろか人家さえ見当たらず、さらに徒歩でしか駅にたどり着けないような、険しい秘境区間が続きます。

天竜川に沿って走る飯田線ですが、伸び盛った木々や藪が邪魔をし、渓谷美が姿を表すことはほとんどありません。

しかし、その景色がパッと開けた僅かな瞬間、エメラルドグリーンに輝く水面と巨大な橋が目の前に現れてまさに絶景と呼べる風景が広がるのです。

「いつか秘境駅も巡ってみたいな」と思いを巡らせるうちにいつしか列車は秘境区間を抜け、頭上に高速道路の巨大な橋が見えると、まもなく「天竜峡駅」。

伊那谷へと下り特急伊那路はラストスパート

観光地として有名な渓谷「天竜峡」は駅の目の前。さらに付近には「天竜峡温泉」が沸き温泉街としても知られています。

秘境区間を抜けた飯田線は、天竜峡を出ると伊那谷に向かって下り勾配が続きます。

遥か遠くに南アルプスの山が見えると、特急「伊那路」の終点「飯田駅」はまもなく。

「飯田駅」に到着した特急伊那路。

ナミキちゃんがお出迎え。(飯田丘のまちフェスティバルマスコットキャラクターのナミキちゃんなんだって!)

真っ赤な屋根がインパクト大。これは信州名産のリンゴと、飯田市のシンボル的な山「風越山」をイメージしたデザインなんだとか。

丸い屋根のところにはステンドグラスもあって、実は結構おしゃれな駅舎。

乗り鉄にとっては100点満点の快適普通列車

さて、飯田駅から先はひたすら普通列車に乗って、飯田線の北端「辰野駅」を目指します。やってきたのは天竜峡始発の普通列車。

辰野から中央本線に直通し岡谷、上諏訪、そして終点「茅野駅」まで行くロングラン列車。

「213系」という車両ですが、転換クロスシートなのでかなり快適。飯田線の普通列車はこの213系のほか「313系」も使用されますが、いずれも転換クロスシートまたはセミクロスシート車両で、乗り鉄にとっては嬉しい線区なのです。

さらに「213系」は、運転席後ろの窓が大きいのが特徴。すぐ後ろのロングシートはもちろん、クロスシートからでも少し身を乗り出せば前面展望が楽しめる。これも嬉しいポイント!

もちろんトイレも完備。100点満点です!
目指す辰野までは約2時間40分。これなら快適に乗り鉄旅が楽しめそうです。

飯田線の名物「Ωカーブ」

飯田市を眺めながら走る列車。

「元善光寺駅」で反対列車と行き違い。

天竜峡より北側は「伊那電気鉄道」により敷設され、最も古い区間は1909(明治42)年に開通、辰野〜天竜峡間全線が開通したのは1927(昭和2)年。途中には石造りの跨線橋が見られ、路線の歴史の深さを感じさせてくれます。

上り勾配、下り勾配、右へ左へカーブしながらゆっくりと進む列車。前に紹介したように、元々は私鉄だった飯田線は、国鉄路線とは違い、敷設当時にあった集落を縫うように線路を引いたためこのような線路になったのだそう。

さらに、伊那電気鉄道は極力トンネルを作らずに等高線に沿う形で線路を敷設したため、いわゆる「Ωカーブ」と呼ばれる急カーブがあちこちに存在します。

急カーブをゆっくりと下り降りる列車は、車窓からでもダイナミックさがよくわかります。

右は南アルプス、左は中央アルプス

「伊那大島駅」に到着。行き違いはありませんが、時間調整のためにしばらく停車します。

停車時間に外に出て息抜きできるのは、ローカル線の普通列車でしかできない事。

伊那大島駅から辰野方面を見たところ。発車後はすぐに上り勾配。

この先は左に中央アルプス、右に南アルプスを望むことができる、景観の美しい区間。

山々のさらに奥からチラリと顔を出す南アルプス。

中央アルプスの方が近くに見えます。

日本の原風景、そして列車の窓枠が額縁。列車の旅って素敵だなー。

「七久保駅」で再び停車時間があり、反対列車と行き違い。

「駒ヶ根駅」に到着。

こちらも停車時間が長いのでホームへ。屋根の向こう側を覗くと、美しい南アルプスが見えました。

ゆったりと流れる時間。

「伊那市駅」を出ると直線区間が多くなりました。列車の速度も自然と上がります。

「伊那松島駅」。列車交換ができるものの駅の規模は小ぢんまりした感じ。ここは伊那電気鉄道時代に車両工場があり要所となる駅だったそう。

現在も伊那松島運輸区があり、この列車も乗務員が交代。

車窓に広がるのは、のどかな田園風景。長かった飯田線もまもなく完乗。

中央本線が合流し広々とした駅構内へゆっくりと入線。

終点の「辰野駅」に到着。飯田線豊橋〜辰野間完乗です!

新線開通でローカル化した旧線

さて私は辰野駅では下車せずに、このまま岡谷まで乗車します。

Wikipediaより

辰野回りの中央本線は1983(昭和58)年に塩嶺トンネルを抜けみどり湖経由の短絡ルートの開通以降は普通列車のみが走り、通称「辰野支線」や「旧線」と呼ばれています。乗車機会が少ないであろう旧線区間も完乗しておこう、という魂胆です。

行き違いのため「川尻駅」で少し停車。この旅で初めて「東京」の文字を目にしました。

元々は特急あずさが走る幹線だっただけあって、線路状態は良くスピードも上がります。

みどり湖経由の新線と合流し「岡谷駅」に到着。私はここで下車しますが、列車は下諏訪・上諏訪を経て茅野まで走ります。

諏訪湖の西のほとりに位置する岡谷駅。駅舎は赤レンガ造り風(コンクリート造りの外壁を赤レンガのように見立てたもので、赤レンガ造りではないそう!)。

岡谷駅から塩尻方を眺めたところ。3本の線路のうち両側が新線、中央の1線が旧線へと繋がります。

ホームには松本行き「特急あずさ」が到着。みどり湖経由の新線を通り、次の停車駅は塩尻。

塩尻から再び辰野へ戻り、今度は辰野〜塩尻間に乗車します。

岡谷駅を発車した列車。上を跨ぐのは新線の下り線です。

辰野駅で一旦下車し、今度は塩尻行きワンマン列車に乗り換えます。車両はこの旅で初登場となる「E127系」。

片側はクロスシート、片側はロングシートという珍しい座席配置。

元は大糸線を走る列車なのかな?

幹線の名残が残る辰野駅、何本も線路が敷かれた広々とした構内にぽつんと停まる2両編成。

辰野から塩尻へ向かう列車は1日11本。間隔が約2時間開くところもあり、本数は少ないです。

途中の「信濃川島駅」。名所(?)の写真を用いた駅名板がJR東日本管内の独特さ。

右側から近づいてきた立派な線路は、みどり湖経由の新線。再び合流すると塩尻駅の構内へ。

新線と合流してしばらく続く広い構内は、かつて「塩尻駅」があった跡地。1982(昭和57)年に現在の場所に移転された事で、中央西線の「特急しなの」が塩尻駅でスイッチバックする事なく長野へ直通できるようになりました。

「塩尻駅」に到着。中央東線の新線・旧線・中央西線・篠ノ井線と4方向のジャンクション、鉄道の要所です。

これにて今回の[全線完乗を目指す旅]は終了。

飯田線豊橋〜辰野間195.7km、中央本線(旧線)岡谷〜辰野〜塩尻間27.7kmを新たに塗りつぶし。鉄道全線完乗を目指す旅はまだまだ続きます。