マサテツ〜食べ鉄旅日記〜

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平成筑豊鉄道の「ことこと列車」|世界一ゆっくり走るレストラン列車

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水戸岡鋭治氏デザインの車両、筑豊の車窓、そしてフレンチコース料理をゆっくり走る列車で楽しむ。平成筑豊鉄道の「ことこと列車」に乗ってきました!

*2020年9月時点の情報を基に作成しています

真っ赤なボディと煌びやかなステンドグラスがすごい豪華列車!

旅のスタートは、平成筑豊鉄道(以下へいちく)とJR筑豊本線(福北ゆたか線)が交わる「直方駅」。

福岡県直方市は、元大関"魁皇"の出身地。駅前には魁皇の銅像が建てられ、さらに福北ゆたか線の特急列車には「かいおう」と名付けられていますね。

立派な駅舎の裏側にひっそりとあるのが、平成筑豊鉄道の「直方駅」。

駅にはすでに「ことこと列車」が停車していました!おしゃれ!

高級感を感じさせる、深みのある赤いボディー。

ひらがなや英語によるレタリングに混じって、ことことならぬ「事事」をデザイン化したエンブレムが。ことことを中国語にすると「事事」なのかな?

こちらは炭鉱で使われた「ツルハシ」をイメージさせる、筑豊ならではのデザイン。

車両のそばには記念ボードが置かれ、皆さん思い思いに写真撮影を楽しんでいます。

では、お待ちかねの車内へ。

おぉー!すごい!なんて豪華なの!!

真っ先に目を惹くのは、天井のステンドグラス。

ステンドグラスはドイツ製で、ステンドグラスを天井に用いたのは水戸岡氏デザインの車両で初めてなのだそう。煌びやかなだけでなく、車内全体が明るく広い空間に感じられます。

座席は、2人掛けまたは4人掛けのボックス席。2号車の一部は対面のソファ席。

座席の間仕切りや窓枠などに使われているのは、福岡県の伝統工芸品である「大川組子」。

JR九州の「ななつ星in九州」や「或る列車」といった豪華列車にも用いられている技術。緻密な細工で表現された木の模様が、華麗に車内を彩ります。

見る方向や光によって表情が変わる姿は、美しいの一言です!

ショーケースの中にはフレンチコースの器にも使われている、筑豊地方の工芸品などが展示されています。

日本酒やワインなど、アルコール類は種類豊富。

いやー、これは飲みたくなりますね!

1号車には、車内で調理を行うための厨房。

こんな所にも「事事」のエンブレムが!

ゆっくりことこと走る「ことこと列車」

さてそろそろ自席へ戻ります。

テーブルにはすでに、コース料理のカトラリーがセッティングされています。

メニュー表の紙の重石に使われている黒い塊。なんとこれは本物の石炭!かつては数多くの炭鉱があった筑豊地方ならではの演出ですね。

そうこうしているうちに、列車は「直方駅」を発車。

ホームページに書かれた紹介文は『世界一ゆっくり走る列車になりたい』。その通り、ことこと列車は時速30km前後でゆっくりと走ります。

すぐに料理が出てくる訳ではなく、まずはのんびりと筑豊の田園風景を楽しみましょう。

向こうに見えるのは「福智山」。いい天気!

受付の際に頂いた、ことこと列車の記念乗車証。かわいい!

へいちくの車両基地がある「金田駅」。ちらりと見えた黄色い車体は、旧国鉄時代に製造された「キハ2004」という車両。保存会によって大切に保存されていて、定期的に運転体験会も実施されているのだそう。いつか運転体験してみたい!

ミシュラン1つ星シェフの監修!メイドイン九州のフレンチコース

さて、車内ではお待ちかねのコース料理が運ばれてきました!
料理の監修は、福岡市にある「La Maison de la Nature Goh」のオーナーシェフ、福山剛氏。九州の食材を使った創作フレンチのお店で、2019年にはミシュラン1つ星を獲得したすごい料理人なのです。

1品目[ことことボックス]
水戸岡氏デザインの風呂敷に包まれた、お弁当箱。中を開けてみると…

色鮮やか!美味しそう!
ボックスに詰まった9つの料理は、へいちくの沿線9市町村の食材が1つずつ使用されているのです。

ズッキーニ、アスパラ、鹿肉などなど。列車に乗りながら地産地消の食材を舌鼓できるなんて、素晴らしいことですね!

ことこと列車のエンブレムが焼印されたパンは、福智町にある「としょぱん」のベーグルを使ったサンドイッチ。中には枝豆とすもものチャツネ(ペースト)が挟んであって、甘じょっぱい味が美味!

香春町("かわらまち"って読むんだって)産のトマトは、中にキーマカレーを詰めた"ファルシ"に。
パスタマシンでパスタのようにカットしたズッキーニは、本当にパスタだと思ってたぐらいそっくり。ズッキーニと茗荷の風味がすごくマッチしています。

右手に石炭記念公園と三井田川鉱業所跡が見えてくると、まもなく「田川伊田駅」。
列車は扉を開ける事なく、すぐに折り返して再び直方へと戻ります。フレンチコースをゆっくり楽しめるように、へいちく線を行ったり来たりしながら進むようです。

2品目[地元産ホワイトコーンのブランマンジェ 〜Gohオープンからのスペシャリテ〜]

「La Maison de la Nature Goh」でも人気のスペシャリテは、店と同じくギリシャ製のガラス容器で登場。

下はホワイトコーンのムース、上はコンソメのジュレ、中には雲丹とタラバ蟹。混ぜずに底からすくうように頂くと、2つの層の味が口の中で重なり合い絶品!滑らかな食感も最高!

スタート地点に再び戻る!?ことこと列車は行ったり来たり

丁度2品目を頂き終わった頃、列車は再び「直方駅」に到着。

人生ゲームの『スタートにもどる』みたいな感覚にクスッと笑いが。

直方駅の停車は"トイレ休憩"と案内されます。ことこと列車にはトイレの設備がないので、この先もいくつかの駅で"トイレ休憩"を兼ねた停車時間があります。

ホームでは、直方市で手染めにこだわり100年以上の歴史を誇る「ひしや染物店」が出店されていました。

おしゃれで素敵だったので1枚購入!

直方では、隣のホームに止まっていた普通列車が先に発車。へいちくのキャラクター「ちくまる」がドライヤーを持つ「マクセル号」のラッピングでした。

普通列車に続いて「ことこと列車」は発車。

何やらキッチンからバターの素晴らしい香りが、車内いっぱいに漂ってきました。
うーっ、たまらない!お腹すいた!

3品目[石炭リゾット 鮑のソテー添え 椎茸と焦がしバターのエスプーマ 〜筑豊の香り〜]

石炭の採掘で栄えた筑豊地方にちなんだ一品。石炭をイメージした真っ黒な見た目には驚きです。

下にはイカ墨で黒く染まったリゾット。鮑のソテーは弾力がありつつストレスなく噛みきれる柔らかさです。さらに、鮑に混じって"椎茸"が隠れているのですが、これがとても肉厚かつジューシーで、美味!
1番上には、ムースの泡状にした焦がしバター。食欲をそそる風味がたまらない!

日本一"アツアツ"なレストラン列車

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再び右手にキハ2004の姿を見ながら、ことこと列車は「金田駅」に到着。トイレ休憩でしばらく停車しますが、トイレ以外の方は車内に残るように案内されます。
なぜなら、金田駅からは調理したて熱々の料理が積み込まれ、そのまま各テーブルへと運ばれるから。

4品目[和牛頬肉のパピオット〜上野焼を感じながら〜]

沿線の田川郡で焼かれる陶器「上野焼」の皿にのせられた一品。ちなみに皿もあたたかい状態でした。

パピオット(パピヨット)とは、魚や肉などを香りのよいつけ合わせ野菜などと共に紙で包み込み火を通す調理法。

中には、とろとろに柔らかくなった和牛の頬肉。ナイフとフォークを使う必要もないほど、口の中でとろけてしまいます。濃厚なソースの味わいが肉に染みこみ、絶品!

何より、料理がとっても熱々、いや熱すぎるほど(笑)
熱々の料理を提供することはコースを監修した福山シェフの強い希望だそうで、ことこと列車のために金田駅にスチームコンベクションを導入したのだとか。

小さなココットの器の中には、具材がたっぷり入ったグラタン。こちらも熱々の状態です。
先ほどの和牛頬肉のソースをかけながら頂くと、ソースに染み出した肉の旨みが最後の最後まで存分に味わうことができるのです。

へいちくの本社がある金田駅。社員の方のお見送りを受けながら、列車は再びゆっくりと走り出します。

左側に見えてきた山は「香春岳」。"こぶ"のような山頂が3つある山ですが、そのうち1つは石灰石の採掘によって、なんと元の半分ぐらいの高さまで削られちゃったのだそう。

車内では、まだ削られる前の香春岳(一ノ岳)の写真や、本物の石灰石が展示されていました。真っ白な石の塊は、セメントなどに変わっていくのですね。

明治時代に開業した田川線を走る

先ほど折り返した「田川伊田駅」に到着。今回はトイレ休憩を兼ねてしばらく停車します。

ホームでは、地元の特産品を発売するマルシェが開催されていました。

JR日田彦山線とも接続する田川伊田駅。広大な駅構内の遠く向こうに、ちょうど列車が到着しました。

田川伊田駅の駅舎内には、なんとゲストハウスがあります。結構お得に泊まれるようなので、次回はぜひ宿泊してみたい!

田川伊田駅を発車したことこと列車。遠くに筑豊の山々や田園風景を眺めながら、文字通り"ことこと"とのんびり走ります。

5品目[枡パルフェ〜沿線でモヒート〜]

いよいよコース料理のラスト、スイーツが振る舞われます。
「九州菊」はへいちくの沿線にある酒造会社「林龍平酒造場」の日本酒。
枡の中には九州菊のゼリー、そしてキューバ発祥のカクテル「モヒート」をイメージしたエスプーマが。ラムの酸味や風味やさっぱり爽やかで、夏のこの時期にぴったりなスイーツ。
このように料理の内容は季節ごとに変わるそうなので、またぜひ乗りたいと思います!

最後のトイレ休憩場所「油須原駅」に到着。

田川伊田駅と同じく、こちらも広大な駅構内。

油須原駅では、こんなに間近でことこと列車を撮影する事ができます。

油須原駅の駅舎は、1895(明治28)年の開業時からのもの。九州最古の木造駅舎だそうで、大変貴重な存在なのです。

過去には映画の撮影に使われたそうで、駅舎の中はその時のセットがそのままになっています。

明治の駅舎と令和の列車。

ホームの端にはタブレットキャッチャーがありました。

昔の面影がそのまま残る油須原駅。もっとゆっくり過ごしたいところですが、まもなく発車時間なので列車に戻りたいと思います。

ラストスパートもゆっくりことこと

「石坂トンネル」は、なんと九州最古のトンネルなのだそう。

車窓は田園風景から、今川の渓谷美へ。

先ほどスイーツで頂いた「九州菊」の林龍平酒造場が見えてきました。

運転席の隣で景色を眺めていたのですが、ふと棚に子どもたちが描いた絵が飾られているのを見つけました。近くを走る線路にカッコいい列車が走ってるなんて、子どもたちも自慢になるだろうなー。

再び沿線に家並みが増えてくると、終点の「行橋駅」はまもなく。

さっきは渓谷だった今川を再び最後に渡り、列車は行橋駅の高架線へ。

直方駅から約3時間20分。ことこと列車は終点の「行橋駅」に到着しました。

ホームではアテンダントの皆さんが乗客をお見送り。

美味しい料理、のんびりした田舎の景色、そして何よりアテンダントの皆さんがフレンドリーでとっても楽しませてもらいました。ありがとうございました!

世界一ゆっくり走る「ことこと列車」の旅へ、ぜひ皆さんも出かけてみてはいかがでしょうか。

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ことこと列車公式サイト

www.heichiku.net